2013年12月1日日曜日

アメリカ企業就職サバイバル(前) レジュメの書き方


※今回は過去のメルマガから人気の記事(2009年2月 Vol.44 No.1, Part 1)をピックアップして配信しています。

さて今回は、アメリカで企業に勤務されているカガクシャネットのメンバーが、「Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには~様々なケースから学ぶこと(総編集前編 / 総編集後編)」に関連して、アメリカ企業で生き残るための秘訣を紹介してくれます。全2回に渡って配信予定で、今号では、まず就職活動の第一関門となる、レジュメの書き方に関してです。レジュメはよく履歴書と訳されますが、日本の履歴書のように写真も貼らなければ、フォーマットも決まっていません。しかし、書くべきポイントは決まっていて、自分を売り込みつつ簡潔にまとめる必要があります。どうぞ、お楽しみ下さい!

ネットワーキング


アメリカ経済は、サブプライムの問題に端を発し、世界経済を大混乱に陥し入れました。銀行を救済するため、多額の公的資金が注入されたり、さらにはジェネラルモーターズ(GM)、フォード、クライスラーという、アメリカ三大自動車会社が倒産の危機に瀕し、政府に救済を求めたことなどは、記憶に新しいかと思います。

統計によると、2008年1月から2009年2月までに、アメリカで360万人もの方が職を失いました。しかもその半数の人々は、ここ 3ヶ月ほどで失業しました。今後も失業率は上昇することが予想されています。これまで私自身は、大学は安全だろうと思っていたのですが、カリフォルニア、アリゾナなど多くの州で、州立大学に対する大きな予算カットが発表され、大学にも不況の波が押し寄せているようです。

このような厳しい状況の中で、多くの方が将来に関して不安を感じていることと思います。また学生・院生の方ならば、就職について心配しているでしょうし、仕事をされている方でも、自分の仕事の将来について、不安を抱いているかもしれません。

しかし、まずお伝えしたいのは、このような不況の中でも、人を探している会社はある、と言うことです。事実、私も最近、うちの会社に来ないか、とお誘いを受け、実際に面接に行きオファーを頂きました。

仕事を見つけるための鍵は、ネットワークです。


特にこのような不況下では、ネットワークは益々重要性を増すものと思われます。ネットワークとは、日本でいう「コネ」に近いものがありますが、日本でのようなマイナスイメージは全くなく、むしろ必要かつ優秀な人材をハズレなしに雇う手段として、非常に好まれています。アメリカでは知っている人を雇う、知っている人の紹介を最優先する傾向があるからです。

下記の About.com 記事によると、60%あるいはそれ以上の人が、ネットワークを通じて仕事を見つけており、ネットワークの優位性を示しています。




そのため、オンラインや雑誌、新聞などに掲載されている求人情報に応募するだけでは、もちろんゼロではありませんが、簡単には面接までたどり着けません。したがって、教授たちと良い関係を築く、友人のネットワークを広げる、学会などで様々な人と知り合いになるように努めることは、非常に重要となります。私も学生のときに、先に卒業したクラスメートを通じて仕事を見つけたケースを多く見ました。私が卒業するときも、今ほどではありませんが、就職難だったので、羨ましく思ったものです。大学の同窓会などを通じて、既に卒業して業界で活躍している卒業生に、ネットワークを広げることもできます。

私も今の仕事は、学会でお会いした方を通じて見つけました。最近面接に行った仕事も、元同じ研究室の友人を通じてのお話でした。LinkedIn.com や Facebook.com などのソーシャル・ネットワーキング・サービスを利用するのも一つの手です。もしまだネットワーク作りを積極的に行っていなければ、是非、今すぐはじめることをお勧めします。

レジュメの書き方(基礎)


ネットワーク作りの次にお勧めすることは、今すぐレジュメを書くことです。仕事を探しているときに、学会などでお会いした方にレジュメを送ってくれ、と言われたことが何度もありました。

日本でもレジュメという言葉が一般的になってきました。しかし、アメリカのレジュメは、日本でいう履歴書とは少々異なります。専用の用紙があるわけではなく、どのように書くかは本人次第です。そうは言っても、レジュメの書き方にはスタイルがあり、きちんとしたスタイルにしたがって書かなければ、それだけで悪い印象を与えてしまうことすらあります。

そこで、アメリカ企業に応募する際のレジュメの書き方について、実体験から学んだことを少し紹介したいと思います。なお、私自身もレジュメの専門家ではないので、あくまで一経験者のアドバイスとしてお受け取りください。

(ちなみに、大学教授・ポスドク職へ応募する場合に書く履歴書は、Resume ではなく、Curriculum Vitae (CV) が一般的ですが、ページ数が多く、書き方のスタイルも違うので、このエッセーでは述べません。)

英文レジュメには、以下の項目を1ページにまとめて書くのが一般的です。近年は、このルールを必ずしも守る必要はないと言われていますが、新卒ならば可能な限り1ページにし、職務経験が豊富でどうしても1ページでまとめられない場合は、2ページとするのが良いと思います。先日、卒業直前の友人からレジュメが送られてきたのですが、何と3ページもありました。明らかに書きすぎでしょう。

必須事項

  • 自分の名前、連絡先(住所、電話番号、Email アドレスなど)
  • レジュメの目的(Objective)オプションだがつけたほうが良い
  • Summary of Qualifications をオプションで付け加えても良い
  • 自分の職歴と業績(Professional Experience): 新しい仕事から年代順に
  • 技術・知識 (Skills)
  • 学歴(Education)
オプショナル
  • 資格(免許証の所持は書かない)
  • 賞与(Awards & Honors)
  • 発表論文・著書(Publications)


日本の履歴書とも重なる部分はありますが、アメリカの場合は、上記の順番は決まっておらず、各自のスタイルによって、あるいは新卒の場合と経験者の場合によって、書き方を変えたほうがよい場合があります。例えば、新卒の場合は、職歴よりも先に学歴を書いた方が良いし、応募しようとしている仕事に直結した職歴がある場合は、職歴を先に書いた方が良いと言われます。

それでは、これまで実際に自分でレジュメを書いたり、人のレジュメを見たり、アメリカ人から聞いたりしたことから、レジュメを書く際のキーポイントをいくつか挙げてみたいと思います。

まず、レジュメは、あなたが応募先の会社に与える第一印象と言えます。そして、第一印象は後々まで響くものです。きちんと整理されたレジュメを書くことは、良い第一印象を与えるための第一歩です。

レジュメの目的は、あなたを売り込むことであり、ただ単に過去のあなたの履歴を列挙するものではありません。応募先の会社があなたを雇った場合、どのようなメリットがあるかを推測させるようなレジュメを目指す必要があります。ただし、売り込むことは大切ですが、嘘を書いてはいけません。生き残りのためには手段を選ばない人もいますが、情報が事実でないと発覚すると、あとで大変なことになります。

レジュメを書くときには、応募するポジションの募集要件に即して書きましょう。つまり、応募するポジションに応じて、いくつか異なるレジュメを書く必要があるということです。企業は会社のニーズに合った人材を探しているからです。

また、素晴らしいレジュメは、あなたの能力・技術、業績について、明確・正直・力強く述べると同時に、あなたの能力・成功を裏付ける証拠について言及します。

レジュメの書き方(具体例)


それでは目的、Summary of Qualifications、職歴の項を例を挙げながら考えてみたいと思います。

目的(Objective)

【例】

  • Materials engineer/scientist position in the ......... industry

この例を使って、いくつかのルールを紹介してみたいと思います。まず、
OBJECTIVE をはじめ、前述の各項目、職歴、記述、教育などは、すべて大文字で書き、さらに太字にします。下線は必要ではないかもしれませんが、太字かつ下線を引くととても見やすくなるのでおすすめだと、アメリカ人からアドバイスをもらったことがあります。

Summary of Qualifications

次に Summary of Qualifications はオプションですが、このセクションを上手く使うと、レジュメをしっかり最後まで読んでもらえる可能性が高くなります。会社は求人広告を出すと、たくさんのレジュメを受け取りますので、スクリーニング(ざっと目を通して選別する作業)で除外されてしまって、実際に人材を募集している部署の責任者に読んでもらえないレジュメもたくさんあります。レジュメをきちんと読んでもらうためには、自分がこれまでに成し遂げた業績と、自分の持つスキルセットに焦点を当てます。レジュメの後の項で書くことの繰り返しにならないように注意する必要があります。

【例1】

  • 5 year experience on designing conductive polymer devices, holding two US patents.
  • Proven ability to design and implement highly effective experiments.
  • Outstanding multi-tasking skills.
  • Japanese/English bilingual.

上の例では箇条書き形式で書きましたが、段落形式という書き方もあります。

【例2】
5 year experience on designing conductive polymer devices, holding two US patents, Japanese/English bilingual, proven ability to design and implement highly effective experiments, and outstanding multi-tasking skills.
個人的には、レジュメは例1のような箇条書き形式で書くのがベストだと思います。理由は、なんと言っても見やすいことです。Summary of Qualifications に限らず、レジュメでは、段落形式でだらだらと書くより、箇条書き形式で書くことをお勧めします。

職歴(Professional Experience)

職歴(Professional Experience)は、レジュメの中でも最も重要な項目です。ここでは、ただ単にどういう仕事をしたかを書くのではなく、どんなプロジェクトに携わってどのような業績を挙げたのか(Accomplish-oriented)をアピールする必要があります。また、仕事を通じてどのような技術を身につけたかを述べることも重要でしょう。下の例では、最初の項である問題を解決したことを挙げ、2つ目の項で、仕事を通じてどのような技術・知識を身につけたかを書いてみました。素晴らしい例ではないかもしれませんが、職歴の項目を書く場合には、ただ単に自分の仕事(Responsibilities)だけを列挙するのではなく、Accomplishments, つまり何を成し遂げたかを書くように努めると、良いレジュメになります。

【例】
Applications Specialist, KAGAKUSHA, INC.
San Jose, CA, Sep. 2002-present
  • Completed more than 30 challenging instrument acceptance tests, leading to successful completion of installation of instruments.
  • Have carried out microscopy/spectroscopy on various materialssystems such as Si-based devices, semiconductor hetero-structures, magnetic multi-layers, nano-structured materials, developing strong materials characterization skills and solid understanding of electron optics.
  • ...

また、アメリカ人の知人に何度かレジュメを見てもらって学んだことは、箇条書きで書く際に、各項目に主語である “I” を書かないことです。例えば上の例で言えば、最初の項目の文章をキチンと書くならば、I completed... と始めるのが正しいのですが、“I” は書かずに Completed... と始めます。また現在進行中のことであれば、I am consulting with... とは書き始めずに Consulting with... と始めるようです。

Relevant Experience & Employment

RA/TA 以外の職務経験がない場合は、Professional Experience の代わりに Relevant Experience & Employment という項目を作れば良いと思います。
この場合も同様に、どのような仕事をしてどのような技術を身につけたのか、あるいはどういう成果を出したのかをまとめます。

【例】
Graduate Research Associate, Prof. XYZ Group,
ABC University, ABC, CA, 2001-2003
  • Carried out research on wide-bandgap GaN semiconductor, and developed skills on thin film growth, and device fabrications.

レジュメに関してはこれくらいにしたいと思います。インターネット上にたくさんのサンプルがありますので、是非調べてみてください。私も参考までに書いてみました。実際に書いてみると中々難しいものですね。コメント・批評などあれば、よろしくお願いします。


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編集後記
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先日、ニューヨーク州ロングアイランドに出張で行った際に、接待でお客さんを夕食にお連れしました。お客さんのリクエストでロブスターをご馳走してくれると言う高級レストランに行ったのですが、大きなレストランのダイニングエリアは空っぽ。火曜日の晩と言うこともあったかもしれませんが、お客は私達4人だけでした。そのレストランにいた2時間ほどの間に、レストランにやってきたのは、私達以外に2人だけでした。不景気の影響で少し高めのレストランの売り上げはかなり落ちていると聞いていましたが、それを目の当たりにした瞬間でした。まあ私達は美味しいロブスターをレストランほぼ貸し切り状態で楽しんだわけですが。オバマ新大統領の下、この不景気を脱出しようと大型の経済活性化案が出ております。この政策で国の赤字、借金が増えるため反対派勢力も多いですが、何とか経済が活性化され経済が上向くことをただただ祈るばかりです。(著者・青木

先日実施したアンケートでもご意見を頂きましたが、この経済不況が、どのようにアメリカ経済・サイエンス界に影響をもたらすのか、多くの方の関心を集めています。それに関連して、杉井さんが「時事ニュース:アメリカ景気対策法案が成立、サイエンス関連は?」と題してまとめてくれました。カガクシャネットのウェブサイトより、ぜひご覧下さい。(編集・山本



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執筆者紹介
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青木敏洋 (Toshihiro Aoki)
カガクシャ・ネットでのタイトル: カガクシャ・ネットアドバイザー

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